創作小説

湯舟の書いた三、四時間クオリティ小説。

全然頭働かないと思いつつ、なんか記事書かなきゃと思い

何故か小説を書き始め、三時間も掛かってしまった。

普通になんかの記事書いたほうがはやかったのでは・・・?

なんでも許せる方だけお読みください。

 

 

 

忘れられない日

 

特別な日に使おうと思っていたLUSHのバスボムは
湯船に浮かんでゆっくり溶けていって、
気分にぴったりのピンクとホワイトに染め上げる。
柑橘系のいい香りに包まれながら、ゆっくり体をあたため
たっぷりの泡で全身を洗う。
浴室からでると、洗いたてのバスタオルに身をつつみ
熱で髪が痛まないようトリートメントをしてからドライヤーで髪を乾かし、化粧水、乳液でお肌をしっかり保湿する。
お気に入りのルームウェアの姿で、全身が映る三面鏡の前に立ち
プロポーションをチェックする。

本日は土曜日。
明日は大好きな彼と思いが通じてからの初めてのデートだ。
彼は、忘れられない日にしてあげると素敵な笑顔で行った。
どんなところに連れて行ってくれるんだろう。
彼とならどんなところでも楽しいに決まってる。
確実に幸せの絶頂にいたのだ。
土曜日までは。



「ちょっと潤一郎!!あんたの彼女すごくきれいだわ!!」
「そうだろ母さん」

待ち合わせ場所の新宿南口、絶え間なく人が行き来する中
私だけの時が止まった気がした。
長身の切れ長の目のスタイリッシュな彼は
横にいるハイカラな格好の小太りのおばちゃんを「母さん」と呼んだ。



日曜日、彼は彼女との初デートに、
あろうことか母親を連れてきた。



「さぁ行こっか」

どうして、の一言も言えずにいると、
彼は母親と腕を組みながらさっさと歩き出したので
慌てて後を追う。



「映画みよう」
どうしてお母さんがいるの。
どうして私とじゃなくお母さんと腕を組んでるの。
「お母さんあれ見たい。松ケンのやつ」
どうしてお母さんがリクエストしてるの。
「わかった。君もそれで文句ないよね」
どうして文句ないと思ったの。

ずっと頭に渦巻いている「どうして」が言えないまま、
映画館で三人仲良く並んで座った。
当然のように真ん中に彼のお母さんが座った。

松ケン太ったねーとかなんとか
お母さんがしゃべると、いちいち彼は相槌をついてあげる。



彼は常日頃、詮索されることを嫌った。
以前に、何というわけでもなく前の日に何をして過ごしたか聞いたことがあった。
そんなにしつこく色々聞いたわけでもないのに、そんなこと聞くのは野暮だと不機嫌になった。
そんなことが何度かあり、学習した私は彼に嫌われたくなかったので、自分の話を主にすることにした。
彼は私の話を楽しそうに聞くし、盛り上げるように相槌してくれる。
彼のことをもっと知りたいなと寂しかったけど、
少しずつ話してくれたらいいなと思っていた。
そういうわけで、私の中で「なぜ」「どうして」は禁止ワードとなっていたのだった。



それでも、今回ばかりは聞いてもいい気がする。
どういうつもりなのか。



「どうしてお母さんといっしょに来たの?」
映画館を出るなり私は聞いた。

「ごめん、こいつがついてくるって聞かなくってさ」
「こいつとは何よお母さんに向かって!」
「ごめんごめん、ママ」
隙あらば親子はいちゃつきだす。
なぜ私といちゃつかない。

「お母さんのこと、大好きなんだね」
皮肉たっぷりの言葉にもひるむことなく、彼はご満悦だった。



ディナーはマックである。
私は27、彼は30のいい年した大人のデートのディナーがマックである。
お母さん(52)がテリヤキバーガーをご所望したためである。

ジャンクフード屋の一席にどっしり腰を落としたお母さんのおしゃべりはとどまるところを知らない。
息子のおねしょをしていた頃から現在までのことを、事細やかに話している。
こんな形で聞きたくなかったのに・・・。

母と息子は、サンデーチョコレートを仲良くわけ合った。



確かにその日は悪い意味で忘れられない日になった。
それ以降は二度と彼と会うことはなかった。